仕事サバイバル

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仕事サバイバル

十番と書かれた麻の暖簾をくぐり格子戸を開けると着物を着た女将が出迎える。女将の案内で奥の個室へと案内されると葉賀が既に待っていた。 「先輩!お疲れ様です!」 今日は後輩二人からの祝賀会だ。 「遅れてすまんな。新人俳優の入待ちしてたら押しちまってよ」 「それは気の毒でしたね。座布団暖めておいたのでここ座ってください」 葉賀は自分の座っていた場所から横にずれると俺はその場所に座った。 この律儀で優秀な人物は葉賀だ。俺の事を一番慕っている後輩の一人で俺の唯一信頼している人物だ。 「待たせると言えば長谷川の奴は?」 と、噂をすれば扉が開き耳障りな声が聞こえる室内に轟いた。 「うぃーす!遅れやしたッ」 「遅いですよ。先輩待たせるなんて後輩失格ですよ」 「マジ、スマソンッ。テヘ」 「まあいいからはよそこ座れよ」 長谷川は「ホイホーイ」と反省の色が全く無い返事をすると、向かいの席に着いた。 全員が揃うと飲み物が運ばれてきた。 「じゃいつもの頼む」と俺は葉賀に合図を送ると葉賀は餌を前にして尻尾を振る犬のように喜んだ。 「それではグラスをお手に取ってください。いいですか?……では、改めて幸輝先輩の月九ドラマ決定を祝して乾杯ッ」 「「「乾杯」」」 懐石料理が次々と運ばれてくる。その品一つ一つがまさにアートそのものだ。
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