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奥歯がギリッとなりハンマーをもつ手に力を込める。そして俺は頭の中で自分の信念を反芻させた。人気を得るためならどんな事でもしろ心の中で唱えるとハンマーを振りかぶり真っ直ぐ振り下ろした。祠は腐食が進んでいたのだろう。壊れる音と言うよりも、ふ菓子を潰したような音と共に粉砕された。空に舞う木の破片が月灯りに照されキラキラとしていた。
その時背筋に氷水を垂れ流したような寒気が全身を襲う。
ッ!……な、なんだこれ。
歯をガタガタと震えさせながら森の奥を見ると蠢く黒い影が見えた。その瞬間本能でそれが危険なものだと判断しハンマーと鞄をその場に捨てると走って階段を下りタクシーに飛び込んだ。
「お早いお帰りで。もうお済みですか?」
「頼む早く出してくれ。あまりここに居たくない」
タクシーは急発信した。
俺はどっと疲れが出て帰りのタクシーの中で眠ってしまっていた。
鳥ノ囀りと共に目を開けると俺は何故か家のベットで寝ていた。運転手がわざわざ……そこまで考えたところでそれは無いと気づく。何故なら俺の部屋を知っているはずがなかったからだ。それなら一体どうやってここまで運んできたのか……
俺は考えるのを放棄した。この酷く痛む頭は、昨晩長谷川達とホテルに移動して記憶が朧気だ。
その後タクシーを……
その時俺のスマホが鳴り出した。画面を見ると見慣れたマネージャーの名前。一瞬嫌な予感が過る。画面のボタンを押して電話に出た。
「もしもし──」
次の瞬間手に持っていたスマホが滑り落ちた。スマホは角から落ち衝撃音と共に画面に亀裂が入り床に転がる。俺は部屋の壁を見つめたままさっき言われた言葉を頭の中で反芻していた。
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