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料理は出揃い会食も終盤を迎えた。
「どうだ!お前ら旨いだろ」
「旨いです。本当幸輝先輩には感謝してもしきれないです」
「ほら、お前も葉賀を見習ってだなぁ……」
長谷川の方を見ると強い酒で既に出来上がっていた。こんな状態では味覚は愚か記憶すら危ういだろう。
「たく。ほらッ葉賀!もっと食え!こいつの分も食っちまえ!」
長谷川の手付かずの刺身が入った器を持つと、それを阻止しようと長谷川が飛び付いてきた。
「おいおいそりゃないっすよぉーセンパーイそのフライドチキンは俺のっす……zzz」
俺と葉賀は顔を合わせケラケラと笑った。
それから一時間程過ぎると長谷川は完全に酔いつぶれテーブルにだらしなく項垂れていた。
葉賀は相変わらず俺の余談話しに真剣に耳を傾けている。
「いいかぁ?芸能界ってのはなぁ……仕事の取り合いなんだ。分かるか?人気を得た奴が仕事を取る。人気が無くなれば下ろされる。だから俺たちはどんな手段を使っても人気を維持する必要がある。まぁその点お前は大丈夫だ。お前は気も利くし、何より持ち上げ上手だしな。先輩としてお前と居ると心地良いよ」
俺はグラスに入った水をクイっと飲み干し葉賀を見据えると、葉賀はその視線に気付き背筋を伸ばした。それを見て俺は口を開く。
「もしお前に仕事が無くなったとしても俺と同じ事務所にいる限り俺がお前を守ってやるからな」
「うぅ先輩!最高です!一生ついて行きます!」
俺の言った事は社交辞令に過ぎない。この業界に入った時点で誰もが分かっている事だ。昨日の友は今日の敵なんて事は日常茶飯事なのだ。そんな中で唯一この葉賀だけは、信頼できる善き後輩であり善きライバルだと思っている。ただまだまだ隣に並ばせる気は無いがな。
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