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「そう言えば葉賀は夢とか目標みたいなものは無いのか?」
「目標ですか……」少し考え視線を泳がせると頭をポリポリと掻きながら話し始める。
「そうですね。自分は母親と二人暮らしなんですが先輩みたいに凄い俳優になって沢山CMに出てお金を稼いで、いつか母親をこんなお店に連れてきたいですね」
本当に良い子の見本みたいな奴だなこいつ。
「葉賀なら直ぐなれる!俺が太鼓判推してやる!」
「ありがとうございます」
軽い睡魔に見舞われ時計を見れば時刻は既に午前二時を回っていた。
「おい、もう二時回ってるぞ」
「僕タクシー頼んでおいたのでタクシーが着き次第先輩は先に帰ってください。長谷川は自分が介抱するんで」
本当に優秀な後輩だ。用意周到なうえに気まできく。でもこれはある意味俺にとって脅威でもある。
まったくうかうかしてられないな。
タクシーが到着すると俺は乗り込んだ。頭を深
々と下げお辞儀をする葉賀を後にタクシーは走り出す。その姿は見えなくなるまで変わる事は無かった。
タクシーは走り出すと直ぐに運転手が会話をふってきた。
「お客さんもしかして矢島幸輝さんですね」
その言葉に反応してバックミラー越しに運転手と目が合う。
「いやぁ息子があなたの大ファンでよく話してくれるんですよ」
俺は「はぁ」と生返事する。
「息子も芸能界でやっていくって言ってね、今頑張ってるんですよ」
「そうですかぁ」と適当に返事をしてスマホに届いた芸能ニュースを見ていた。その記事は人気スター強制わいせつで逮捕という記事を見て、少し胃の辺りがキュッと締め付けられたような錯覚に陥る。
「実は私ある噂を耳にしたんですよ」
その言葉にビクッと反応してしまう。
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