仕事サバイバル

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「お客さん着きましたよ」 車を下りて気づいたが、ここは道路と呼べる道路ではなかった。車が一台通れる程の舗装されていない道。所々アスファルトは剥がれ絶壁からは山水が崖に向かって大量に流れていた。ガードレールの無い崖の先は飲まれてしまいそうな暗闇が広がっている。こんな道路を走って来たと考えるとゾッとした。 「お客さんこっちですよ」 運転手は懐中電灯を片手に崖の脇にある山道を指差していた。 「まさかこんなとこを上がれというのか」 「そうです。私はここまでしか行けないので後はお客さんだけでお願いします」 「あ、あと祈願する時の決まり事なんですけど、です。覚えておいてくださいね」 正直そんな事どうでもよかった。何故なら俺の目的は祈願ではないからだ。 懐中電灯を受け取るとゴクリと唾を呑み込み緩慢な動きで山道の方をライトで照らした。 嘘だろ…… さっきは見えなかったが目の前に腐食が進み所々傷んだ大きな朱色の鳥居が現れた。その異様な佇まいは、来るものを拒むような威圧感。そして一度入ってしまったら二度と出る事の出来ない粘着質で重々しい空気が俺の肺の中を満たしていく。 「どうぞお気をつけて」 ここまで来て今さら引き返す事は出来ない。俺は意を決して鳥居を潜った。 潜ると直ぐに上へと続く岩を積み上げただけの階段が現れる。それを一段づつ登っていく。 苦しい。この苦しさは、ここの標高が高いからなのか。それとも本当に人知の越えた得体の知れない存在が俺の首を締め付けているのか。 俺の額から汗がじとりと滲む。 階段を登りきった所でそれは直ぐに現れた。目の前に禍々しくも朽果てた祠が唐牛で形を保ちながらも佇んでいた。 俺はとにかく早く事を済ませてこの場所を離れたかった。持っていた鞄から(おもむろ)にハンマーを取り出し祠の前に立った。 祠には最近備えられたであろう花とお供え物が置かれていた。 「葉賀……」
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