1.再会

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「え? だって、名字が昔と変わってたから……」 そう伝えると、伊吹さんは「ああ。そういうことか」と納得した顔をしてみせる。 「俺が大学生の時に両親が離婚したんだ。まあ、夫婦としては別れたけど、仲が悪くなった訳ではないから、未だに両親と俺と三人で会ったりするけどな。一応、俺は母さんと暮らすことになったから、母さんの旧姓に名字が変わったって訳」 「じゃあ、結婚はしてないってことですか?」 「してないよ。独身」 そうだったんだ。誤解してたみたいだ。 「ついでに恋人もいないしなぁ」 「……でも、モテるでしょう?」 「あはは! まぁなあ。廣佳は? 彼女とか、いるの?」 「え? あ、いや。僕もいません」 そんな会話をしていた、その時だった。 「社長。そろそろいいですか?」 先程の秘書らしき男性が戻ってきた。 一瞬、僕の方をじろりと睨んできた……ように見えた。 僕のせいで、予定になかった行動を伊吹さんにされて、怒っているのかもしれない。
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