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「あー……悪いな、廣佳。もっと話したかったけど、色々と予定もあって」
「い、いえ! 僕の方こそ、急に声を掛けてすみません……。でも、お話し出来て良かったです……」
ここで離れたら、またずっと会えなくなるのかな……。
そう思うと、切なくなってしまう……。
すると伊吹さんが、懐からスケジュール帳らしき物とペンを取り出し、開いたページにサラサラと何か書いていく。
そしてそのページを破ると、それを僕に手渡したのだった。
「これ、俺のLINEのID」
「え?」
「事故後に引っ越したあの時は、絶対に連絡先は教えないって決めてたけど……。今日、会いに来てくれて嬉しかったから。またゆっくり話そう」
「は、はいっ」
「じゃあ、またな」
秘書の方の元へと戻りながら、伊吹さんは笑顔で手を振ってくれた。
遠くなっていく伊吹さんの後ろ姿を、僕はしばらく見つめていた。
そして、連絡先が書かれたそのメモにもう一度視線を落とす。
伊吹さんの綺麗な字で書かれた、連絡先。
凄く嬉しくなって、思わず顔が綻んでしまった。
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