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緩む頬を何とか引き締め、父さんの元へと戻る。
その後は父さんと一緒に、パーティーに出席している人達の中にいる、弊社の関係者に挨拶回りなどをしていた。
その間、伊吹さんと再び話しをする機会はないまま、パーティーはお開きとなった。
帰り際には彼の姿を探したけれど、伊吹さんは先に帰ってしまったようで、彼の姿を見付けることは出来なかった。
「伊吹君と、帰りがけにゆっくり話せなくて残念だったな?」
鈴木さんの運転する車の助手席に座る父さんが、後部座席に座る僕にそう聞いてくる。
車は真っ直ぐに家まで向かっている。
「うん。でも、連絡先教えてもらったんだ」
「そうなのか。良かったじゃないか」
「うん」
スーツの上着の胸ポケットにしまっておいたあのメモを、再び取り出す。
何度も何度も、伊吹さんの字を見返す。
家に帰ったら、メッセージを送ろう。絶対に……。
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