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そして、約束の金曜日。
「えっと、公園のオブジェの前……」
伊吹さんとの待ち合わせ場所にやって来た僕は、辺りを見回して彼の姿を探す。
待ち合わせの定番スポット、しかも金曜日の夜のせいか人が多いけれど、無事に伊吹さんを発見出来た。彼は今日も、スーツをビシッと着こなしている。
「伊吹さん。お待たせしました」
僕が駆け寄ると、伊吹さんは「お、廣佳。全然待ってねーよ?」と笑ってくれた。
そして僕の姿を見ながら。
「あ。ちゃんとスーツ着てきたんだ?」
「はい。ここで食事するとのことだったので……」
そう答えながら、僕はそのビルを見上げる。
結婚式会場で有名なそのホテルの三十階は、よくメディアでも取り上げられている高級フレンチレストラン。
カジュアルな格好でも来店は出来そうだったが、仕事終わりの伊吹さんは恐らくスーツ姿だろうと思い、僕もそれに合わせてきた。
先日のパーティーに着ていった物よりはカジュアルなスーツだけれど、私服よりはこの姿の方が無難だろう。
……それにしても、やっぱり伊吹さんはかっこいい。
この人の隣を歩き、一緒に食事をするなら、僕も見劣りしないようにしなければ。
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