1.再会

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「いいだろ? この前はビジネスの場でもあったから敬語許してやったけど、今日は完全にプライベートなんだ」 「で、でも……」 「はい。今から敬語喋ったら罰ゲームな!」 「ば、罰ゲームってどんな?」 「んー。キスする」 「あはは、何それ! 分かった。男の人にキスされても困るし、普通に話すね」 「ああ。そうしてくれ。じゃあ、行くか」 そう言って、伊吹さんはホテルの方へと身体を向ける。 そして、杖を使ってゆっくり歩き出した。 その隣を、僕も同じペースで歩いていく。 「ごめんな。俺、歩くの遅いけど」 歩きながら、伊吹さんがそんなことを言ってくる。 「そんな……謝らないでよ。そもそも……その怪我は……」 「……僕のせいだから、とか言うなよ?」 「……」 うん、とも違う、とも上手く言えずに、無言で俯いてしまう。 そんな僕に、伊吹さんは明るく言うのだった。 「今度そういう顔したら、キス百回な!」 「え、ええ? 増えてる!」 「俺は構わないけど?」 「構うでしょ」 「ははっ。まあ、歩くのに不便なこともあるけどさ、今はこれが自分らしさの一部だなと思って完全に受け入れてるよ」 「……うん」 ーー伊吹さんの怪我は、僕のせい。 そう思わなくなる日が来るかどうかは、分からない。少なくとも、今はまだ……。 それでも、伊吹さんの前で暗い顔ばかりしているのも違う気がする……。 「足元、段差あるから気を付けてね」 「サンキュー」 だからなるべく、笑顔を見せたい。
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