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「伊吹さんは、どういう経緯で会社を立ち上げたの?」
メイン料理であるフィレ肉のステーキを食べながら、僕は伊吹さんに問い掛けた。
今日はプライベートと言われたし、僕もそう思ってはいるけれど、仕事の話も純粋に聞いてみたいと思った。
「あー。この前のパーティーの時にさ、俺と一緒にいた男、覚えてる?」
「秘書の方?」
「そうそう。まあ、今は秘書みたいなことしてくれてるけど、元々は大学の同級生なんだよ」
大学の同級生……そうだったのか。確かに、年齢は伊吹さんと同い年くらいだった。
「俺、サッカー出来なくなってからは代わりにやりたいことも見つからなくて、毎日つまらなく過ごしてたんだけど……。ある日、大学のゼミでIT先進国への研修旅行が開かれることになって、あいつに誘われたんだ。一緒に行ってみようって。
まあ、俺自身も研修には元々興味はあったんだけど、足も悪いし、あいつが誘ってくれてなかったら行ってなかったかもな」
「その時の研修旅行が、こっちでIT企業を立ち上げようと思ったきっかけになったんだ?」
「うん。会社を自分で作っていくって、結構楽しいぜ」
大学時代の仲間と会社経営……。
今の僕で言ったら、亮や総と会社を立ち上げるようなものだろう。確かに、想像したら楽しそうだ。
勿論、楽しいばかりではなくて大変なことも多いはず。それも含めて〝楽しい〟と笑顔で言える伊吹さんは、本当にかっこいいし素敵だ。
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