第一章

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誰もいない、静かな場所。 学園内の裏庭にある、あまり知られていない場所。 そこに俺はよく足を運んでいた。 「はぁ、もうこんな時間か。」 あと少しで昼休みが終わる。 いじっていたスマホの電源を切ってポケットにしまった。 そしてベンチから立ち上がり教室に向かおうと歩き出す。 クシュッ あぁクシャミが…夏風邪か? そういえばさっきから体が重い気がする。 保健室寄りてぇ。 でもあの保健医セクハラで有名だから行きたくねぇな。 …薬だけでも貰っていくか。 「ねぇ君、これ落としたよー」 鼻をすすりながら歩いていると後ろから声がした。 振り向くとそこには、この学園の絶対的存在とも言われている生徒会メンバーの一人、会計の江咲(こうさき) 志紀(しき)が立っていた。 「…え」 まさかここでこんな人物に会うとは思っていなかったので驚いた。 「これ、君の落し物でしょ?」 そう聞かれてはっ、と我に返った。 慌てて胸元のポケットを探る。 あ、ない。 どうやら江咲が手に持っている『落し物』は俺のものらしい。 「…あ、あぁ、ありがとう。拾ってくれて。」 江咲の元まで行き『落し物』を受け取る。 「ねぇ、その写真、なんの写真なの?」 お礼を言って去ろうとしたら、その前に呼び止められ足を止めた。 その写真とは先程拾ってもらった『落し物』のことである。 「…この写真か?」 「うん、すごくブレてて何が写ってるか分かんないからちょっと気になっただけだけど。」 …何が写ってるか分かんない、か。 「…この写真は……なんだと思う?」 答えることなく逆に質問すると、俺より少し背が高い江咲は俺を見下ろしながら、目を大きく開けて驚いた顔をした。 そして、直ぐに悩んだ表情を見せた。 「ん〜そうだなー、ちょっともう一度写真見せて〜。」
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