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テレビではおしゃべり怪獣みたいな司会者が、タレント夫婦の離婚騒動をネタにお笑い芸人をいじっている。ここのタレント夫婦も似た物同士だったな。離婚しちゃったけど。
どうしてみんな、浮気なんてするのだろう。これから夫婦で頑張りましょうと、あの日誓った思いはどこにいってしまうのだろう。
夫の晴樹の顔が浮かぶ。毎日一本づつ、ゆきに赤いバラを贈るほどの情熱だったのに。
冷めた目でテレビを見るゆきに、両親がチラッと互いに目配せをする気配がした。2人の顔を見ていなくても空気で分かる。次は、母親が喋る番。
「あんた、ひょっとして、晴樹さん浮気でもしただかね」
母のそれは女の勘なのだろうか。いきなり核心につかれ、ゆきはドキッとした。コタツで伸ばしていた足を縮めて体育座りの形になってしまったのは、無意識の防御だった。
妻の言葉で、急に合点がいったのか父がしみじみと語り始めた。
「おまえも結婚して、3年くらいは経つか。昔っから、3年目の浮気っちゅうから、まあ、気が緩む時期でもあるだろうな。夫婦一緒にやってきて、ようやく軌道に乗る頃だ。それくらいに男も余裕が出てくるから、言い寄ってくる女が現れるんだ。や、いや、父さんはそんな事しとらんけどな。だからな、もし浮気だとしても、ちゃんと晴樹くんと話をせにゃいかんぞ」
「そうだよ、ゆき。お父さんの言う通りだで?」
ゆきは何も話していないのに、娘の帰省だけで、よくもまあここまで話を広げられる。まあ、当たっているのだけど。
テレビでも大物司会者が「俺もハニートラップで酷い目にあった!」と神的な援護射撃を出す。
浮気なんて、浮気なんて。
なんて、腹立たしい。
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