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「浮気じゃないよ。ただの夫婦喧嘩」
言ってから、ゆきは我ながらおかしい言い訳だと思った。里帰りまでしたら“ただの”ではない。両親も「でも」と顔が言っている。
「あー……訂正。ただの、激しい夫婦喧嘩。私の気が向いたら帰るから。原因はプライベートの事だから聞かないで」
これ以上の詮索を受ける前にと、「お風呂、先にもらうね」とにげた。心配はありがたいが、このモヤモヤをどう説明していいか。自分自身も戸惑っている状態だ。
ゆきは風呂場に行かずに自分の部屋に戻った。そこは結婚する前と一つも変わっていない独身時代の時のままになっている。
ベッドに寝転んで自分の携帯電話を見ると、夫の晴樹からのメッセージと着信の記録。
“ゆき、いつ帰ってくる?”
“寂しいんだけど”
知るもんか。もっと寂しくなってしまえ。
前はこんなメッセージも可愛く見えて嬉しかったのに、今はこの無邪気さに腹立ちを覚えてしまう。
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