あなたのくれる花

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 晴樹が携帯を持ち歩かなくなってからのある日、いつもと違う匂いをつけて帰ってきた。 「なんかくさい。なんの匂い?」 「え、なんだろうな。営業先の事務の子の匂いかな」  晴樹は嘘をつくのが上手い。いや、わたしには嘘をつかない。匂いの正体をさらりと言う。私の性格上、聞いたことに答えたらそれ以上追求しないのも晴樹は知ってる。  晴樹は嘘をつかない。 「ゆき、大好き。マジでお前が居なくなったら、俺やばいかも」  知ってる。何十回、何百回も聞いたセリフ。  そのセリフ、別の誰かにも言ってるの?  聞きたい。けど、聞けない。嘘を言わない人だから、どんな答えが返ってくるのか、怖い。  多分相手は、あの子だ。  前に、営業先の事務の子と世間話をしたら、実は近所だったって言っていた。二人でベランダでビールを飲んでる時に、「あ、きっとあの家だ」と指差してたっけ。マコちゃん、って言ってたかな。
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