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きっと今地面で、己の血で赤く染まっている死体はまだほんのり温かいはずだ。
辺り一辺に広がる血痕が生々しさを露わにする。いずれ俺が出会うであろう場面だった。そして何より自分で恐怖を覚えたのは、自分自身命を奪うことに何の躊躇いもなくなっていたことだった。顔色一つ変えずに全員斬り殺していたことだった。
「お、おい宗達…!!どうした…!?大丈夫か…!?」
「あっ…父上…」
父上のその言葉がなければ今も俺は現実世界に帰ってこれなかっただろう。そこで初めて俺は想像力の怖さを思い知った。気がつくと俺は体を震え上がらせ大粒の涙を流していた。父上の顔を見た途端全身の力が抜けその場に崩れ落ちた。瞳孔を開いたまま呆然と一点を見つめて涙を流し足も手も震え、声も掠れきって喉は空虚な筒でしかなかった。脳という名の思考の化け物が生み出す想像の力が虚構を作り上げてしまった。
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