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冗談めかして笑いながら言う彼を心底蹴りあげたい気持ちで一杯だが、この体のせいで叶わない。もし私の体が動けば今すぐにでもこの場所を出るが生憎今は到底できないため御二人が帰ってくるまで諦めて岳さんとの雑談に付き合うことにした。
「二人とも遅いねぇ?いったいなんの話をしてるのかな?」
「私に聞かれてもわかるはずないです」
御二人が去ってからかなり時間が経過した。
岳さんとの会話も途絶えた時ふと岳さんが出ていった戸の方を見つめて私に問いかける。すぐ戻ると言われた言葉が頭にあるため何だか妙に長く感じられた。
「もしかして婚儀の話でもしてるのかな」
「婚儀…?!どうしてそんなことを岳さんが?!」
「いやぁ〜その話をしてるかは知らないよ?でもこの前チラッとそんな話を耳に挟んでさ」
「何処で何をしてどういう風にすればそんな話耳にするんですか」
私の話に「忘れちゃった!」と軽い調子で言う岳さんにため息が漏れる。
婚儀ということは二人は夫婦になるという事だ。わかりきった理解でも追いつかない。
いずれそうなる運命である二人だが、まだ先のことだとばかり考えていた。そしてこういう話は本人達の内密な話であるのにも関わらず岳さんが耳にしたというのは何故なのだろうと疑問を持ち始める。
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