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私はため息混じりに吐き捨て、その長い一日の終りに近づくため一歩ずつ着実に昇っていく。階段を一段と二段としっかり踏みしめて昇る。階段を昇るだけでここまで緊張したのは初めてだった。
やっとのことで最上階に到着すると、今度は不快な匂いで鼻が折れ曲がる程刺激された。
「うぅ…今度はなんだ…血が腐った匂いか…?いや…それだけじゃないな…」
鼻が感知したその臭気の正体は恐らく一般人なら分からないだろうが、武士を務め少なからず戦闘し、人を斬ってきた私にならわかる。それも全て蓮花様を護る為や自己防衛で行った行為であり、虐殺などは決してしていない。そんなことをすれば武士としてだけでなく、人が学び、活かし、時には見習う誠の心を疑われ兼ねない。
だがその匂いはまるで道理など知らないように思えた。それだけでなく匂いの筋を作って伸びているようにも思えた。
悪臭が指定場所まで導いていると言うのだろうか。それならば、なんて悪趣味な城なんだろうと心から思う。匂いの筋を辿り奥へ進むと、相変わらず光はなく、未だ薄暗い。最上階と言うだけあって1階よりは明るさが心なしかあれど、お世辞にも明るいとは言えない。全くなんという仕打ちだ。
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