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皆と共に
私は迷いなく短刀で腹部を刺した。
「カッ……ハッ……!」
息をすると共に大量の血液が腹部から逆流し口から吐出した。溢れ出た血液は重力に従って純白に煌めく床を汚す。
裂けた傷口に焼けるような痛みが走り、そこからも大量の鮮血が流れ落ちる。
「ア……ハハ……」
痛覚も麻痺して、とても清々しい気持ちが込み上げ、力ない笑い声を漏らす。
ウレ……シイ……。
丸まった背を伸ばし、上を向く。
だんだんと壊れる心を看過して最期を待ち侘びる。
もうすぐ会えると思うと嬉々として笑いが込み上げたのだ。皆は先に逝ったのだろうか。
もう昇って逝ったのか。
「マ……ッテ」
置いていかれる焦燥感の一心で腹部に刺した短刀を勢いよく横に動かす。
「……ガッ!」
さっきよりも勢いよく流れ出す血液はもう誰にも止められない。ヒューヒューと乾いた吐息に血が混じる。もう口内は血液で満たされ血の味しかしない。痛みが何かもわからなくなっていった。武士は武士らしく散る。誇りある死が最期に華を飾るだろうと信じていた。切腹は時と場合によって、その度合いを変える。これは私情に過ぎない。誇りなどどこにもないのだ。
これで……いいんだ。
ハヤク……アイ……タイ……ヨ…。
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