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本来男である俺が恭華を引っ張るべき立場なのに俺は涙を止めることで精一杯。
「グスッ…ありがとう…」
鼻をすすりながらか細い声でお礼を伝える俺。
すると恭華はまた俺が転ばないようにか、それとも俺の手を握りたかった……いや、まさかな。
「はい、こうしてれば転ばないでしょ?」
恭華は俺のために手を強く掴んでくれた。
「うんっ!」
俺もその手を強く握り返して太陽のような笑顔で笑う。
この時の俺はとても感情を高ぶらせた覚えがある。
何故なら大好きな人の手を握ることが出来たから。その温もりに触れることが出来たから。きっと恭華は知らない。
俺がこの頃から恭華に密かに想いを寄せていたことを。完全に片思いだったがそれでも良かった。「いつか伝えればいい」とそれくらいだった。
いつも周りからは姉と弟みたいと言われ可愛がられていたが俺はそれがとても嫌で仕方がなかった。
だから決意したんだ。
例えこの気持ちが伝わらずとも、いつか俺が恭華を引っ張れる男になると。隣を歩くのに恥じない男になってやると。そして武術を覚え武士になり、彼女をあらゆる危険から守ろうと。
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