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俺よりも少し背が高い彼女の背丈を抜かし今度は俺から彼女の手を握ろうと。彼女が握り返してくれなくてもいい。俺の気持ちを伝えるだけだから。そう強く心に誓った。
「早く帰りましょ?もう暗くなってしまうわ。父上に叱られる…」
「うん…僕それだけは嫌だよぉ…」
「はいはい、もう分かったから!そうならないように早く帰ろう?」
叱られる前からまた涙目になる俺の涙を止めるように恭華は俺の手をぐいっと引っ張り前へ進んだ。
これは唯一彼女が女の子らしい時期の思い出である。
俺の大事な……大事な思い出。
俺はこの手の温もりを忘れないことだろう。いや、忘れたくても忘れられなかった。
でももうこんな嬉しい気持ちで彼女の温もりに触れることは無かった。
いや、出来なかった。
そして俺が彼女に気持ちを伝えることが出来たのはその手を握ることが出来たのはもっと先の話である。
彼女はこんな俺をどう思っていたのだろう。
その気持ちを聞く勇気すらなくて怖くて聞けなかった。
だだ俺は彼女が元気に明るく幸せに生きてくれればそれでいいと思っていた。
俺はそれをずっと隣で見守りその笑顔をま持っていこうとそう決めたはずなのに。
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