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俺は男だから当然武士になることが決められているのだが、俺が初めて刀を持った時は恭華よりも小柄で小さく身長も低かった。
弱虫で怖がりで臆病で泣き虫な俺は何かあればすぐ泣いて、酷い時は声を上げて泣くこともあった。そんな時は必ず恭華が、隣にいてくれたけれども。
毎日毎日嫌々ながらに父に稽古をつけられていた俺はいつも木刀を適当に振り回すだけだった。
本当は嫌だったのだ。人を殺すなど。
そんなことしたくなかった。それでもその気持ちを押し殺して、なんとか基本が様になってきた時、父上が俺に短刀を差し出した。俺はそこで初めて刀を手にした。木刀とは違った重み。木刀にはない刃の鋭い輝き。木刀とは違う本物の殺人器に圧倒され、足と刀を握る手が震える。これで人を斬るのか。
人の命を奪い取るのか。という考えを巡らせていると、とある場面に迷い込んだ。
大きく成長した自分が人を斬っている場面。斬った人間の返り血を全身に浴び、刀を赤く染め上げている場面。そして振り返るとさっきまで生きていた人間が大量の血を流し死んでいる場面が思い浮かぶ。内蔵などをばらまいて体内を露わにした死体もあった。
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