隣室の地底人

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 地底人の部屋は変わっていた。昼も夜も、すべての窓が生地の厚い遮光カーテンで覆われており、日が射し込みそうなすきまにはガムテープで厳重に目張りがしてあった。  そのうえ、彼は部屋の中でも決してサングラスを取らなかった。理由を尋ねると、「地底人だから」と彼は答えた。俺は吹きだしそうになりながら、「なるほど」と言った。おそらく室内の明かりでさえ、彼の目には毒なのだろう。地底には明かりも太陽も無いから。  そんなある日のこと、俺は街のちょっとした異変に気づいた。最初は、俺の通院していた歯医者だった。朝の九時から夕方の五時までだった診察時間が、夜の八時から朝の四時までに突然変更された。まったく何の説明もないままに。  次は近所の商店街だった。昼間は閉店して、夜間のみ営業する店が何軒か出てきた。と思っていたらあっというまに、すべての店が夜間のみの営業に切り替わってしまった。
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