隣室の地底人

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 やがて、昼間には歩行者も車も見当たらなくなり、日が沈む頃になると、仕事始めの通勤ラッシュが始まるようになった。会社も大学病院も学校も市役所も郵便局も警察もすべて、日が沈んでから始まるようになったからだ。  警察が夜間だけ仕事をするというのもおかしな話だったが、昼間にはほとんど誰も活動しない以上、特に困ることもなかったのだ。  異変は世界中に広がり、政治も経済も文化も犯罪も、その活動はすべて夜に集中した。昼の世界は完全に死んでしまったのだ。  ある夜、地底人が思いつめた顔で、俺の部屋を訪ねてきた。 「ついに君の番が来た」  彼はそう言うと、サングラスを取って、血のように赤い瞳で私を見つめた。
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