終わり

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終わり

ということで 体育祭当日 魔王は綱に化けて競技会場に忍び込んだ なるほど… シュヴァルの言っていた通り 男の勇者は一人もいない…か これでは少子化問題も進む一方だろうに 周囲は体操着を着用した 女勇者ばかりだった …うむ…いいな… 現在綱に化けている魔王は、まじまじと人間観察に(いそ)しんだ あの体操着のブルマとやら… 破壊力があり過ぎる… 興奮して鼻血が一向にとまらなかった あの薄い布切れで、防御力は一体どれほどの物なのか みんな鍛えているだけあって 引き締まったいい身体をしていた 目の保養完了 来てよかった… ありがとう、シュヴァル 中にはガチムチの女性とは思えない、ゴリラのような奴が何人かいたが… まぁ…見なかった事にしよう それから暫く待機した後、待ちに待った綱引きが始まった 大勢の女勇者達が身体を密着させ、綱を握る 「感無量だ…」 「ん?クレア、今なんか言った?」 「いや、何も…」 危ない、危ない…幸せ過ぎて声に出てしまった そして開始の銃声が鳴り響く 女性達が引っついてくれるまでは良かったが、引っ張り出すと話は一変した いっ…!? 身体中に激痛が走る ぐっ、く…うほぉああああ!! 数十人の人から全身をつねられているようだ… 特にゴリラがチームに入っていたら、そりぁもう地獄マッサージ うぎゃあああ…ぬぐっ…ぎぃひぃぃー… しゅーしゅー…死ぬぅ…死ぬぅぅぅ… パンッ 一試合目が終了した はぁ…はぁ…やっと終わった… この体育祭は参加人数が多い為、チーム数もそれに比例して多くなっている 必然、対戦回数も多い 「はーい、あと○試合残ってまーす。選手は迅速に準備してくださーい」 夢だろ…これ… 魔王、茫然自失 それから幾多の痛みの重なりにより気を失ってしまう魔王 綱引きが終了しても、魔王は意識が戻る事はなかった 気がつくと、競技会場から離れた場所に寝転がっていた 「気がついたか…」 声の方向へ視線を向けると、黒髪のポニテが隣で座っていた どうやら彼女が助けてくれたようだ 「助けてくれて、ありがとう…」 「礼には及ばない」 「あっ…いてて…」 背骨が軋む… 「全く…くだらない事をするからだ。この変態め。女と言えど、仮にも勇者だぞ?サイコロステーキになりたいのか?」 サイコロステーキか…絶対に嫌だ 「いやぁ…全くだ。あのゴリラ女のおかげで脊髄(せきずい)がイカれるかと思ったよ」 「ゴリラ女?ふっ…」 それを聞いてポニテは笑った 「あっはははは、相変わらず面白いな…」 「ん?相変わらず?」 「あぁ…10年前も、こうして笑わせてくれたじゃないか」 「10年前…」 「覚えてないか…無理もない…私はティアだ。よろしくな」 そう言って、彼女は腰にある刀に手をかけた 30629f64-7916-4a0c-88a1-e94a2527733e 【勝負】 「おいおい、ここでやる気か?」 「ああ、誰もいないし、好都合だ…私が勝ったら……お前を貰う!いいな!!」 彼女は顔を真っ赤にしながらとんでもない事を言っている 魔王の目は点になった 「何を言ってるんだ?お前は…」 「わからないのか?プロポーズだ!!」 「いや…あの…なぜプロポーズしたの?てかプロポーズした相手になぜ刀を向けてんの?怖いんだけど…」 「強い奴に興味があるのだろう?昔、バス停にいた時、そう言っていたはずだ…今ここで私の強さを証明しよう」 バス停の時?…あっ、ああ!…こいつ…あの時の子だったのか まったく…綺麗になって…全然わからなかったわ 「って、そんな事はどうでもいい。こっちは魔王なんだぞ?わかってるのか勇者」 「ああ、魔王と勇者。不釣り合だがその間で子孫が残せる事が最近発覚したんでな。なんら問題はない。後は他の者よりも先にお前のハートをクラッシュさせるだけだ!!」 クラッシュ!? めちゃくちゃ物騒な事言ってるよぉ、この子ぉ… お願いだから そこは優しくキャッチして? 「と、というか…もっと若い奴を探した方がよくないか?僕は…ほら、ちょっと…おじさん臭いだろ?ね?」 「いや、ドストライクだ」 この子…男前やなぁ… 女にここまで言わせておいて、答えない訳にはいかないな 「…ティア。お前はどうなんだ?」 「えっ」 「強い奴は好きか?」 「ま、まぁ…」 「なら、俺が勝ったらお前を貰う。それでどうだ?」 「っ…///そうか///い、いいぞ!臨むところだぁ!!」 ティアは嬉しそうに笑った 「……」 そんな彼女の表情が可愛いくて、魔王の身体はフリーズを起こす 僕の負けだ… 戦うまでもない 魔王のハートはすでに彼女にクラッシュされていた
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