木の下の娘

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木の下の娘

夏の草原。 ムッとした草いきれの中を 二人の女が歩いている。 「ねぇ、休もう!」 不満そうに唇を尖らせるのはソフィア、 20才の語り部だ。 「お嬢様、お待ち下さい。 まだ目的地まで半分も行っておりません。 というか、 出発して2時間も経っていないような…」 「ケチ!」 そう言い捨てると、ソフィアは舌を出した。 この少女の用心棒であるノノは 密かにため息をついた。 全く、甘やかされて育ったせいで… ソフィアはお嬢様である。 国の中でも3本の指に入るほどの大きなムラ。そこの領主の娘だったのだ。 ちなみにノノは 当時そこに仕える腕利きの殺し屋であった。 ソフィアが語り部になる時に 過保護の父親、もといソフィアの父の 命を受け用心棒となった。 それから3年。 ソフィアのわがまま気質は治ることがなく、ノノの苦労は続いている。 つい癖で ソフィアのことをお嬢様 と呼んでしまう自分もどうかと思うが… 「ノノ、休むからね!」 限界らしく、 一方的に宣言したソフィアは 近くの木に向かって駆け出していった。 走れる元気…あるじゃん… 思わず脱力するノノ。 まぁ、いい。休もう。 ノノも木の下に入って行った。
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