0人が本棚に入れています
本棚に追加
Ⅱ
彼女と出会った日、僕は今までにないほどに悩んだ。それはもちろん、彼女の名前についてだ。美しい響きをもった高貴な名前、マリー。この名前を思いついたとき、僕は震えた。我ながらいい名前だと思う。すこしは自分を好きになれそうだ。僕は君の名前をとても気に入っている。君も気に入ってくれていたら、僕はとても嬉しい。
前述した通り、僕は彼女のことを何も知らない。マリーの部屋をどう装飾するか、服やアクセサリーはなにを贈れば良いか、本当に悩んだ。けれども僕なりに、彼女によく似合うと感じたものを選んだ。僕が贈った綺麗なドレスや装飾品に身に纏った彼女。僕が飾った部屋にいる彼女。
マリー、嗚呼マリー。僕は恐ろしい。僕と君が離れ離れになる日でもなければ、勿論僕が死ぬ日でもなく。君がある日突然目覚めて、惨めな僕を罵って、去っていく。その日が訪れることが、なにより恐ろしい。起こるはずがない出来事に怯える僕を、君は奇妙に思うかもしれないが、毎晩夢に見るほど恐ろしいのだ。
彼女と僕は住む世界が違う。頭では分かっている。それでも君を愛さずにはいられない。マリー、僕の傍にいて欲しい。永久でなくても構わないから。
最初のコメントを投稿しよう!