ひとこと

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ひとこと

 中里安人は、別にアップしている『君が教えてくれたこと』と『夜が終わる場所で』の二作に副主人公格で登場します。どちらも、主人公のサポート役的なポジションのキャラクターです。  転校を重ね、自らを根無し草だと見なしている安人が、大学卒業を控えて不安になる、というモチーフ自体は、本編に当たる『君が教えてくれたこと』を書き上げた2003年頃から頭にあって、場面の走り書きなどはしていたのですが、特に作品に仕上げる予定もなく放置していました。元々は卒業式前夜、不安を抱えて深夜の京都を散策する話になっていました。  「卒業式後」の物語として、こういった形で作品になったのは、恐らく、現在大きな問題となっているコロナが一つのきっかけになったのだという気がします。各学校の卒業式の中止が次々に報道され、他にも春の選抜やインターハイの中止など、日々色々と耳に入ってきています。晴れ舞台を奪われた学生さんたちは本当に気の毒だと感じていて、そんな中、やっと大学で四年間を全う出来た安人に、卒業式を迎えさせてあげたいと思いました。  私は割と登場人物を実在の人間感覚で捉えてしまう方なのですが、安人がもしこのコロナ下で卒業を迎えていたら、「やはり自分は、みんなと一緒に区切りをつける行事とかには今ひとつ縁がないんだろうなあ」などと感じただろうなとか、そんなことを思いつつ。  一応、本作では名前を出さないように書きましたが、安人が通っていたのは京都大学という設定になっておりまして、本編にはそう出てきます。現在の大学の卒業式や学位記などネットである程度は調べて書いておりますが、そもそも20年近く前になる当時の卒業式の様子が判る訳もなく、当時の京都大学の卒業式を事実に忠実に描写しよう! とも特に意図しておりませんので、どこか異次元の京都大学ということで、雰囲気で読んで頂ければと思っております。現在の京都大学の卒業式はコスプレで有名だそうで、中々に賑やかなもののようですね。  何だか久しぶりに長々と「あとがき」を書きました。独立した物語というには少し甘い構成の小品ですが、何かお心に残るものがありましたら幸いです。  2020年5月9日 きさらぎ
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