三角関係

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「あらあら。またけんかしてるのね。どうしたの?」  と、かすみたちの母の百合子。    二人はそれぞれ、怪獣のようにわめいて自分の言い分をまくしたてる。 「じゃ、こういうのはどうかしら」と百合子。 「かすみちゃんがお兄ちゃんのお嫁さんになって、お兄ちゃんはたっくんのお嫁さんになるんでしょ。  たっくんがかすみちゃんのお嫁さんになって、三人で暮らせばちょうどいいわよ」 「お母さん、おかしなことを教えないで」と郁人。  だが、そもそも、そう簡単に丸く収まるわけがない。 「かすみ、たっくんとはケッコンしない!」とかすみ。 「たっくん、かすみちゃんとはケッコンしない!」と巧。  二人は取っ組み合いのけんかを始め、休戦協定もないまま、泣き疲れて「お昼寝」という名の、自然の休戦状態に突入する。  おかげで郁人は、ふたりが起きるまで、おやつを食べられないという憂き目にあう。  取り合いの対象になるのも憂いの多いものだ。  それに正直、妹たちのおままごとに取り合うのは、郁人にとって、少々退屈でもある。  だが、二人が眠っている間は、おままごとや怪獣ごっこに付き合わされずに、ゆっくりと本が読めるのだ。  この際、自分に取り合わずに、二人だけで手を取り合って遊んでくれると一番いいのだが、と郁人は思うのだった。
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