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「お客さまは『・花言葉』をご存知ですか?」 「え?何それ?知らないです」  (おっ、食いついた!) 「『花言葉』は贈る人の気持ち。『・花言葉』は、贈られた女性が男性に対して感じる気持ちです」  もちろん、業界にそんなものはない。私のアドリブ。  正一くん、素直に聞いてくる。 「じゃあ、赤いバラの『裏・花言葉』は?」 「『ナルシスト』・・・です」 「わっ!マジですか?」  この人、ほんと素直だわ。 「お客さまが真っ赤なバラの花束を贈った時、相手の女性はそう思います」 「そうなんだ。じゃあ、赤いバラの花束なんて贈れませんね」  (あ、たしかに・・・)  これじゃ、売れない。花屋として本末転倒だわ。フォローすべし。 「赤いバラは、特別なお花です。ですから、一世一代のプロポーズの時にいかがでしょう」 「なるほどね。それなら、カッコつけても許されそう」 「結婚記念日に贈られても素敵です」 「特別な人に特別な日に贈るのですね。それをポイポイいつでも誰でも贈ってしまうと・・・」 「逆効果ですね。『何この気取ったナルシスト?』としか思われません」
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