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1.
学校からきちんと並んで来たのに、公園が見えたとたん、みんなの足並みが速くなる。
男子たちはふざけて階段を駆け上がり、「オレが1番!」と言い合っている。
女の子たちは「ちょっと、待ちなさいよ!」とお姉さんぶりながらも、目を輝かせて走り出す。
私も、みんなの後を追う。
上りきると、斜面いっぱいのツツジが大迫力で迎えてくれる。
「うわあ……」
薄いピンク色に濃い赤紫色、そして白の巨大なじゅうたん。ところどころに、赤がアクセントみたいに散っている。
何回見ても、圧倒される。
自分が、まるで小さなアリになったような気になる。
ここは西山公園ていう、ツツジの名所だ。ゴールデンウィークにある『つつじまつり』は、たくさんの人でにぎわう。
桜小学校の5・6年生は、毎年ゴミ拾いといっしょに、咲き終わってくったりしおれたツツジの花を摘みとる。この作業をするとしないのでは、花のつきが違ってくるらしい。
「今日のあなたたちの働きで、来年も素晴らしい花が咲くからね。さあ、がんばろう」
先生からゴミ袋が配られる。6年1組は、班ごとに袋の重さを量ることにした。1番重かった班は、担任の中川先生からごほうびがもらえることになっている。
「3班は1番ねらうよ」
班長の千尋ちゃんが、大股で通路を歩く。
「美郷ちゃんは手袋はめてるよね。他のメンバーでいっぱい集めるから、適当でいいでね」
絵美ちゃんが私の手を取り、両手で包む。
「ええと、ところで、その仕事をしてもらう2人は……?」
にぎやかな沖田くんは、糸の切れた凧状態で、姿が見えない。
虫博士の山崎くんは、しゃがみこんで草むらをのぞきこんでいる。
「山崎ぃ! 虫は後!」
千尋ちゃんが、山崎くんの首根っこをつかんで立たせている。
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