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4.
合唱の練習が始まった。放課後は学校中で歌声が響く。
隣のクラスの声が聞こえると、私は、気ばかり焦って上手くまとめられずにいた。
「初めのところ、ソプラノはもう少し声を出してもらえるかな」
そんなこと言われても、とか、ちゃんと出してるし、と声が聞こえる。
姫川さんがソプラノパートのメロディを奏でる。
「音、よく聴いて!」
音に厳しい分、言い方もきつい。
はいはい、と沖田くんが手を上げる。
「なあ、歌って気持ちよく歌うもんやろ。そんなにバンバン言われたら、のどが詰まるって」
そうだ。気持ちが大事だ。私は、気分転換をしてみようと思いつく。
「じゃあ、何か、ゲームでもしてみる?」
「それいい! フルーツバスケットしよっぜ」
沖田くんが応じる。姫川さんが立ち上がる。
「何言ってるの! 時間もないのに」
「なら、3回だけ。3回したら練習するし」
みんなはきゃーきゃー言いながら、椅子を円形に置いて座る。
お題を言われて、叫びながら椅子を取り合う。
3回目は当然のごとく「フルーツバスケット!」だ。
全員がきゃーっと言いながら、走り回る。
沖田くんが私に「ほい!」と促す。私は我に返って「整列!」と声をかけた。
その後の練習では、声が出ていた。何より、表情が生き生きしていた。
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