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2.
中学2年になった。
始業式の朝、校門のところで絵美ちゃんといっしょになる。
「クラス替えやよ。ああ、ドキドキするね」
絵美ちゃんは、興奮して、ほほを赤らめている。
私は人見知りするから、誰と同じクラスになるのか不安だった。
でも、絵美ちゃんはしっかりしてるから、そんなことないのかと思っていた。
「絵美ちゃんもドキドキするのん?」
「そりゃあ、するやん。同じクラスにイケメンがいたら、そんだけで毎日が楽しくなるやん。恋のアドバンテージも高くなるし」
「そ、そっちの話?」
「当たり前やん。ていうか、他の話でドキドキなんかせんて」
生徒玄関に張り出された、クラス発表の名簿を目で追う。
「あ、絵美ちゃんと同じ!」
「ほんとや! キャー! 美郷ちゃん、よろしくぅ」
ある人の名前のところで、どきんと胸が高鳴った。
そこには、1年の時は違うクラスだった沖田くんの名前があった。
「ん? 美郷ちゃん、表情が変わったよ。誰、誰?」
「ううん、別に。えっと、ほら、姫川さんがいっしょやなって」
「うっわあ。けっこう、6の1のメンバー集まってるんでない? ほら、沖田もいるし」
「あれえ? そ、そうやね」
2年生の教室は、2階だった。クラスの表示板を確認して教室の扉を開ける。
目の前に、背の高い男子の背中がある。思わずぶつかりそうになる。
「お、悪い」
くるりと振り返ったのは、沖田くんだった。間近で見るのは、久しぶりだ。まさかこんなに高くなっているとは思わなかった。
「美郷もここか。やったね」
美郷と呼ばれて、ドキッとする。声は低くなっている。
私は、細かくまばたきする。挨拶ぐらいしたいのに、言葉が出ない。
「ちょっと、沖田、じゃま。早く中に入ってま」
後ろから絵美ちゃんが文句を言う。
「何や、絵美もいっしょか」
「何やって、何やの!」
ああ、沖田くんは前から名前呼びだった、と思い出す。
何で自分だけが特別だと思ったのか、おかしくなる。
小学校の時みたいに、普通に話そう。
絵美ちゃんに引っ張られて、席に着く。
でもこれからの学校生活は、きっと楽しくなる。
絵美ちゃんの法則なら、そうやよね。
もう一度、私は向こうにいる沖田くんに視線を走らせた。
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