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私は勢いよく立ち上がる。椅子がガタンと大きな音を立てる。 「あの、えっと……」 「私のことを推薦したのは、ただ自分が伴奏したくなかっただけなの? 素晴らしい合唱になるって言ったのは、口から出まかせ?」  姫川さんにまっすぐ見られると、たじろいでしまう。 「そんなわけでなくて……姫川さんのピアノが素敵だから、演奏してもらいたくて……」 「ありがとう。でも、ソロの演奏は自信があるけど、伴奏はどうかな。そこは、指揮者のリードが必要でしょ。天谷さん、やってくれるわよね?」   私が指揮者? 無理無理! 「それは、ちょっと……」 「おいおい、何か忘れてないか? これって、クラスの合唱やろ?」沖田くんだった。「姫川だけがやるわけでないし。それに、美郷が指揮者になっても、1人に責任被せたりせんて。そうやなあ?」  沖田くんが見回すと、そうだそうだと声が上がる。 「えっと、では、決を採ります!」沢村くんが叫ぶ。「指揮者は、天谷さんにお願いしたいという人は手を挙げてください」  ズザザザザッと、音がするほどだった。  何と。満場一致で、私に決まってしまった。みんなが拍手する。  拍手をしていないのが2人いた。1人は、アメリカの俳優のように手の平を上に向けて肩をすくめる沢村くん。そして、ポカンと口をあける私だった。
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