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どうしてだろう
窓の外の木の花がそよ風に吹かれる様子がわからないのに
私には懐かしいふるさとが
リビングの花を見ていると思い出されるのだ
一歩一歩あゆみ出していった
私の赤子であったころの一つの記憶
その時も花が咲き
いのちは私の中でふくらみ
ほころび
私の口から生まれていった
降る、さく、ら、雨の中、さく、ら、雨の中、舞う、舞う、私がクマリであったころ、私の帰る場所はいつも、さく、ら、さく、ら、たどたどしい音色で奏でられるうた
うたが降る
降ってくる
私は何度恋をして
何度うたを失いかけたのか
花が降る
降ってくる
あなたと私の帰る場所
遺伝子に記憶があるとすれば
私とあなたが生きていくことは
雨のように突発的なことだったのかもしれない
今日もあの桜の木の下には花びらが積もっているのかしら
失いかけて取り戻す、また失って取り戻す、闇へ闇へと歩んでいた私は、逆再生されて光の方へ歩き出す、私のふるさと、懐かしい場所へ
「私のふるさとはね、さくらがきれいなんです。いつかあなたにも見せてあげたい」
いつかあなたにも見せてあげたい
こんな世の中で
いつそれが実現するのか分からない
日々繰り返されるデータとわけのわからない情報と戦いながら
乗り切っている
明日も懐かしい場所へ帰ろうと誓う
私とあなたの
懐かしい場所
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