ある日のふたり 〜君なしではダメ〜

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ある日のふたり 〜君なしではダメ〜

『雑誌、見たよ』 「そう」 『また人を撮る様になったんだね』 「…まぁな…」 電話の向こうの声がイラついているのが分かる。 『瑞希兄さんがまた人を撮る時は、俺を最初に撮って欲しかったのに』 「仕方ないだろ。俺もお前も好き勝手に予定を組める立場じゃない」 『それはそうだけど…』 明らかに不満そうな声に、小さく溜め息を吐く。 それが聞こえた様だ。 『俺と話すの…嫌?』 「…そんな事言ってないだろ」 『俺の事なんか本当は面倒臭いんでしょ?だから俺以外の人を最初に撮ったんでしょ?』 「っ、いい加減にしろよ!?爽汰!」 『あの写真の人、カッコ良かったもんね。もしかして瑞希兄さんって、ああいう人がタイプなの?あ、それともミモザ館の氏原さんみたいな人かな?』 「爽汰っ!!」 電話の向こうで何かを我慢する様な、息が詰まる声がした。 「……また人を撮る様になったのは今回が初めてじゃない。前に奎亮(けいすけ)さんを撮影した時の雑誌をお前も見たんだろ?」 『そう……だけど……でも!あの時はホテルとか建物がメインだったじゃん。人をメインに撮ったのは今回が』 「だから仕事だって!仕方ないだろ!?」 『……』 今度は聴こえる様に態と大きく溜め息を吐く。 「もういい。これ以上何を言っても同じ事の繰り返しだろ」 『瑞希兄さん?』 「俺また暫く家を空けるから。1週間か2週間は帰らないからな。電話も掛けてくるな」 『え?ちょっ、兄さん』 「じゃあな、お休み」 『兄さん、待って!瑞希兄さん!』 爽汰の俺を呼ぶ声が聴こえたけど、問答無用で通話を切る。 そのままスマホを枕の上に投げると、ベッドに背中から倒れ込む。 爽汰の言いたい事は分かる。 けど、俺だって仕事を選り好みできる立場じゃない。 今回の件だって、爽汰が気にする様な事は何も無いのに… 寧ろ「そんな風に言うのは、お前に何か疚しい事でもあるんじゃないか?」と、言ってやれば良かったんだ。 「……爽汰のバカ野郎…」 持ち上げた腕で目許を隠した。
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