君がいれば ~すれ違う恋、ふり向く愛。~

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岳晴 side 幼馴染で一つ年下の永沢弦矢は、同じ男の俺から見ても “カッコイイ” と思う時がある。 しかも遅刻や早退の常習犯なのに頭は良いし、喧嘩だっておいそれと負ける事は無い。 そんな奴だったから問題児と嫌味や陰口を叩かれる事は多かったけど、弦矢は元々そんな事を気にする様な奴じゃなかったし、そんな性格もあってか女子生徒から好意を寄せられる事が少なくなかった。 俺はそんな弦矢が羨ましくもあり妬ましくもあり、でもそれ以上に放っとけない手の掛かる弟の様に思えていつも小言と世話を欠かさなかった。 いつだって弦矢は俺の隣に居た。 それが当たり前過ぎて、時に向けられる弦矢からの強く熱い視線の意味をちゃんと理解していなかった。 いや違う…理解する事が怖かったんだ 「もう『チューして』なんて言わないから。だから…安心して?」 そう弦矢が言ったのは、何度目かの説教を喰らったらしいと人づてに聞いた話を弦矢に確認した時だった。 いつもの様に小言を言おうとした俺に弦矢がそっと笑い掛ける。 向けられた笑顔はいつもと同じ筈なのに、どこか寂しそうに見えた。 次の日、いつもの様に一緒に登校した筈の弦矢の姿は、下校時間には既に無かった。 他校の不良と喧嘩して一週間の停学を喰らったと聞いたのは、その三日後だった。 「お前は!何考えてんだよっ!?1週間後って言ったら体育祭だぞ!?練習どうするつもりだよっ!!」 「別に~、どうせサボるつもりだったし」 「サボるって…!」 「どうせクラスメートだって俺が出るなんて思ってないしさ。あ、岳兄の応援には行こうかな。今年が最後でしょ?」 何でもない事の様に言う弦矢が、何だか寂しくて、悲しくて、腹立たしくて、 「お前の応援なんか必要ない!!」 そう言って、弦矢の部屋を飛び出した。 体育祭当日、雑用係よろしく駆け回っていると、 「おい、金城!借り物競争に出るんだろ!?次だぞっ!!」 そう呼ばれて、慌てて入場門へと向かう。 嫌だと言ったのに、人数合わせの為に出場させられる羽目になった種目だ。 昔っからクジ運ないんだよな~、俺… スタート音と共に、一斉に走り出す。 皆が銘々拾った紙を見て散り散りに走って行く中、自分の手元の紙に書かれた文字に呆然とする。 【無人島に持って行きたいもの】 何だコレっっ!!? 「金城!何やってんだよ!?走れよ!!」 「金城、ボーっとしてんなっ!」 えっと無人島だろ?マッチとかライターとか? いやそれよりもナイフとかか? 軽くパニックを起こしていると 「岳兄ぃ!頑張って!」 聞こえて来た声に顔を上げた直後、自分でも気づかぬ内に走り出していた… 「弦矢、一緒に来い!」 「え?ちょ、ちょっと、岳兄っ!?」 弦矢の腕を掴みゴールへと、その先へと走る。 君がいる 俺の隣に君がいる それだけで、それだけが、何より嬉しいんだ…
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