君がいるだけで ~すれ違う恋、ふり向く愛。~

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君がいるだけで ~すれ違う恋、ふり向く愛。~

※『君がいれば ~すれ違う恋、ふり向く愛。~』続編 弦矢 side 卒業証書を受け取り席へと戻る岳晴兄を真っ直ぐに見つめながら、力の限り拍手を送る。 ふと此方を向いた岳晴(たけはる)(にぃ)と目が合った気がした。 微笑むと少し皺が目じりに寄るのに、俺も飛び切りの笑顔で応えた。 『校門の所で待ってるから』 メッセージを送った携帯電話をポケットに捩じ込んで、デイパックを肩に掛け教室を出る。 下駄箱へと向かう廊下を歩きながら、岳晴兄との思い出が彼方此方に残る校舎をゆっくりと見回す。 「勉強を教えてやる!」と言いながら、気づけば俺が岳晴兄に教えていた図書室 授業をサボった罰として掃除を言い渡された俺を「手伝ってやる」と言ったのに、標本に怯えていた生物学室 休み時間に勝手に入って昼寝をしていた俺を起こしに来て、つい一緒に眠ってしまった音楽室 廊下の窓から外を見下ろす。 体育祭の借り物競争で岳晴兄に腕を引かれて一緒に走った校庭には、何人かの卒業生とその家族の姿が見えた。 あの日、体育祭が終わった後で岳晴兄に訊いてみた。 「なんで俺だったの?」と。 一位でゴールしたのに、何処かムスッとした顔のまま返ってきた答えは「…別に……お前が見えたから…」だった。 それでも良かった。それでも嬉しかった。 岳晴兄にとって俺が、少しでも必要な存在で居られる事が… 岳晴兄が一緒だったから、学校の行き帰りも楽しかった。 岳晴兄が一緒だったから、つまらないと思えた毎日も楽しい思い出に変わった。 岳晴兄が居たから…、岳晴兄が居るだけで… 背後からパタパタと聞こえてきた足音に、口許が弛む。 その足音が誰のモノかなんて、振り返らなくたって当てる自信がある。 「弦矢っ!!」 ほら、ね…
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