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もうひとつの邂逅 ~Drink it down~
※『you』より『Drink it down』の番外編です。
『……君は?』
『えっ?…あ、僕は…皓太さ、神谷先輩の大学の後輩です。貴方は…』
皓太さんのあの様子、きっとあの人が先輩の大切な人なんだろう…
そしてきっとあの人も…
何度となく話に聞いていた一緒に住んでいる人。
皓太さんは親戚だって言ってたけど、そうじゃない事ぐらいとっくに気づいていた。
「あ~あ、やっぱり失恋決定かぁ…」
大きく溜め息を吐くと、ずっと後ろをついて来る人を視線だけで振り返った。
「いつまでついて来るんですか?」
不信感は隠さず、でも少し怯えた様子はひた隠しにする姿が可愛く見える青年に、思わず笑みが零れる。
レイが余りにも俺から隠そうとするコウタがどんな奴か気になって、レイに黙ってこっそり見に行ったら予想以上に可愛くて俺好みの人間だった。
けれど、今は目の前のこの青年の方がずっと気になって仕方ない…
「何?俺の事が気になる?」
「別に……気になるって言うか……つけ回されているみたいで嫌なんです」
「正直だな?」
「…遠慮して言いたい事も言わないでいたら……本当に欲しい物だって手に入らなくなるって……たった今身を以って知ったから…」
何でこんな事、今日初めて会ったばかりの人に言わなくちゃならないんだろう…
どうして僕は見ず知らずのこの人に、こんな事を言ってるんだろう…?
「コウタが好きだったのか?好きだって言わなかったのか?」
「……言える訳ないよ……あんな2人を見たら」
少し俯いて寂しそうに呟いた青年から、得も言われぬ匂いが漂った。
さっきのコウタとは違う、見た目に反して大人びた香りに思わず喉が上下する。
「…なら、俺と付き合ってみないか?」
いきなり腕を掴まれ無理矢理引き寄せられた身体に、覆い被さる様に重なる身体と首筋に感じる小さな痛み。
「なっ!ちょっ……あ、…ん、ぁ…」
咥内に広がる艶めかしく甘い味と香りに、青年の腰に回した腕を更に引き寄せる。
暫し堪能した後、身体を離して初めてその顔を真っ直ぐに見た。
「お前……名前は?」
「……優希、透野…優希」
「…ユウキ、俺は悧赫だ。周りの奴等はリックって呼ぶけどな」
「……リック…さん、は……吸血鬼なの?」
「ああ、そうだ。………俺が怖いか?」
ユウキの目の中に、光が灯るのが見えた。
リックの目の奥に、強い光が見える。
このヒトが欲しいという光…
「怖くないよ。…だからもっと…僕の血を飲んで、悧赫」
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