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人間には2種類の人間がいる。
1つ目は、生きることに必死になる人間
2つ目は、死に急ぐことに必死になる人間
自分は前者で
彼女はきっと後者だろう。
彼女と出会ったのは、最近の事だった。
特別な出会いというわけでもなく、単純に
住む部屋が隣同士ということだけ。
お隣さんというやつだ。
最初は挨拶をする程度だったが、話をするうちに仲を深め、いつしか僕は彼女のことを好きになっていた。
彼女も多分僕のことを好いていてくれていたと思う。
それなのに、
僕は生きることを望んでいた。
しかし彼女は、死ぬことを望んでいた。
「どうして、君はそんなに死に急ぐんだ」
「このままじゃいけないから」
「生きることを諦めちゃだめだ」
「何も未練なんてないもの」
「僕は君と今のままで生きていたんだ」
「そんなの現実から逃げているだけ」
「どうしてわかってくれないんだ」
出会った頃は、ごく普通の友人同士だったはずなのに、どうしてこうなってしまったんだろう。
「現実を見なきゃ何も変わらない」
「君が死んだら、全てが変わってしまう」
「どうして生きることに必死なの?」
「君と共にいたいからだ」
「だったら一緒に死にましょう」
「それじゃ救われない」
「そんな気持ち偽物よ」
「どうして君はそんなに死にたいんだ」
「また同じ質問」
「どうして……」
「今に疲れたのよ」
僕も疲れた。
「そんなの僕だって」
「もう今のままでいるのは嫌なの」
僕も嫌だよ。
「それは僕も同じだ、君が死ぬのは嫌だ」
「早く、死にたいのよ」
僕だって本当は。
「僕は生きたいんだ」
「本当はあなたも死にたいんじゃない」
あぁ、そうだ
「そうかもしれないね」
「死にたい?」
「あぁ、本当は死にたい」
その時、彼女は笑った。
「やっと気がついた?」
「あぁ、やっと思い出した」
「こんな生き方ホントにしたい?」
「いいや、もういいんだ」
「そう、なら一緒に死にましょう」
「もう、死んでるけどね」
人間には2種類の人間がいる。
生きることに必死なもの。
死ぬことに必死なもの。
しかし、必死になるということは
「必ず死ぬことである」
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