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ニートですっ!
ピピピピ……
朝のアラームが鳴ると私は起きてベッドから出る。
着替えずにPCに向かう。
時間は東京市場が開く15分前。
市場が開く時間には必ず大きな動きが現れる。
終る時間でも同じ事が言えるけど。
私はモニターに映るローソク足を見る。
私が見ているのは映っているローソク足の動きじゃない。
そのローソク足がどちらに向かうかを見ている。
私がパパから授かったギフトの一つ「予知能力」
それさえあればどんなに複雑な要因の絡む相場も上か下かの二択でしかない。
開く寸前に私は注文を入れる。
そして利益を獲得するとすぐに利確する。
これで私の朝の仕事は終わり。
再びベッドに戻って寝ようとするが……。
「冬莉!いい加減に起きなさい!どうしてあなたはいつもそうなのですか!?」
愛莉が起こしに来る。
自己紹介が遅れた。
私の名前は片桐冬莉。
片桐冬夜と片桐愛莉の末っ子。
兄の片桐冬吾はサッカー選手として大成している。
一方私は大学は卒業したものの仕事をする意味が分からずに、だらだら毎日を送っている。
愛莉は五月蠅いけどパパは何も言わない。
きっと「どうせ嫁に行くんだから好きにさせておけ」とでも思っているのだろう。
ちなみに今交際してる人はいない。
付き合った男の数は沢山いる。
だけどすぐに飽きる。
パパから貰ったギフトその2「人の心を読める」
相手が下心見え見えなのが分かると急に冷めてしまう。
散々貢がせて飽きたらポイ。
私は悪女と呼ばれるようになっていた。
どうでもいい事だけど。
中には貢いだものを返せと往生際の悪い男もいた。
ちゃんと返却した。
どうして男は似たようなものをプレゼントしてくるのだろう?
同じものが何個あってもしょうがないので一つくらい返したところでどうでもいい。
逆に「私の体はたった数十万程度の価値だと勘違いしていたのか?」と腹が立つくらいだ。
今まで異性と肉体関係を持った事は無い。
当然同性ともないけど。
愛莉がいい加減五月蠅いので部屋着を着てダイニングに向かう。
テーブルには私の朝食が置かれていたのでそれを食べながら愛莉の小言を聞く。
パパはリビングでテレビを見ていた。
仕事の殆どは空兄さんと翼姉さんがやっているので、パパは重役出勤しても問題ないくらいだ。
社長なんだから重役か。
「冬夜さんからも何か言って下さい!」
愛莉がパパに救援を求めていた。
「冬莉は何かしたい事はないのかい?」
「あるけど……」
「何をしたいんだい?」
「ゲーム」
「冬莉!!」
愛莉が怒鳴りつける。
だけどパパはにっこりしている。
「お小遣いでやれる程度にしておきなさい」
パパの考えは大体愛莉とずれてる。
「冬夜さん!この子はも22歳なのですよ!それでいいのですか?」
「父親の考え的には変な男と同棲されるよりはましだと思ってしまってね」
「それはそうですが……」
「冬莉もいつかは誰かと結ばれるんだよ?そうしたらこうやって家にいる事も無くなる。帰ってこれなくなるかもしれない」
パパは私を手放すのが惜しいらしい。
まあ、そんな事多分無いと思うけど。
「ちゃんと愛莉たちの老後は私がみるから」
「家事の手伝いどころか自分の部屋の掃除すらしないあなたがどうして私達の世話をするのですか?」
朝食を終えると「ごちそうさま」と言って部屋に戻る。
再びPCの前に向かう。
もちろん取引を再開するわけじゃない。
さっきも言ったやりたい事「オンラインゲーム」を始める。
この時間は大体の人は仕事や学校でいない。
レベルを上げる為の狩場やインスタントダンジョンの生成が楽に出来る。
適当に音楽を聴きながらゲームを勧める。
それに飽きた時の方法も心得ている。
動画配信サイトを使ってゲーム実況を始める。
配信者が女性というだけで閲覧者はかなりの数になる。
媚を売るような可愛い声で喋りながらゲームをするだけで色々貢いでくれる。
中には誹謗中傷をしてくる不届き者もいるけどそこは茜姉さんから教わった方法で成敗する。
大体2度目の誹謗中傷は無い、というよりは出来ないようにしてしまう。
それも飽きる頃には昼ご飯の時間になる。
用意されているご飯を食べると部屋に戻って眠る。
「冬莉!またあなた宛てに届いてますよ!今度は何を買ったの!?」
「わかんない」
その言葉の通りだった。
私に届く物は二通りある。
一つは私宛への貢ぎ物。
二つ目は私が転売目的で買った物。
もう大学も卒業した以上、そんなに小遣いも沢山望めない。
だったら自分で稼ぐしかない。
ありとあらゆる方法を駆使して金策をしていた。
たまに怪しいグッズを送りつけてくる奴がいるけどそれは普通に返品する。
夕方くらいになると、空斗達が帰ってくる。
「冬莉、遊んで~」
「まずは宿題が先でしょ」
「じゃあ、教えて~」
ただで3食食わせてもらっているのだからそのくらいのサービスはする。
そうしていると空兄さんたちも帰ってきて夕食の時間になる。
うちは大所帯だ。
愛莉とパパ、翼姉さんと空兄さんとその養子3人、お爺さんとお婆さん、冬吾の奥さんの瞳子と今年生まれた絵里。
茜姉さんと天音姉さんは家を出て主婦をやっている。
食事を終えると風呂に入って部屋に戻り、ゲームを再開する。
日中いなかったギルドの面々が集まりダンジョンの攻略とかを始める。
私のキャラは見た目はそれなりに可愛いものを選んでいた。
衣裳装備というものをつけて本来の装備を隠している。
当然全部飢えた男どもが貢いでくれた物。
実用系の装備は自分で買ったりするけど。
そんな中見慣れないキャラクターがいた。
名前は「クルト」と書かれていた。
ギルドマスターに「新人?」と聞いてみる。
「ああ、過密鯖を嫌ってこの鯖に来たベテランだよ。中々いい装備もってる」
このゲームはプレイヤースキルなんてほとんどどうでもいいくらいキャラクターの強さは装備で誤魔化せる。
私とは逆で見た目にはこだわらない実用装備だけを買っているみたいだ。
「よろしくね、私LiLi」
「ああ、動画で見た事あるよ。LiLiさんは有名だよね。よろしく」
感じはよさそうな人だった。
現実とゲームの違い。
それはプレイヤーの心までは読めない事。
心を読むどころか相手の素性を知ることはまずできない。
だからこっちも警戒して接する必要がある。
ギルドマスターの言う通り装備と腕前は超一流といったところか。
ボイスチャットを嫌うようだけど中味は女性なのかな?
でも声を聞くまでもなく自分の役割を把握してるようで、ちゃんとこっちの思い通りに動いてくれる。
その日のダンジョン攻略が終ると最後に精算をして今日はお終い。
「LiLiさんは凄いね。噂通りだった」
「クルトも十分凄いと思う」
「ありがとう」
そう言ってその日はログアウトした。
時間は既に日付をまたいでいた。
これが私と来るとの最初の出会い。
どんな人なのだろう?
私が他人に興味を抱いた時だった。
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