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食堂で奎亮兄さんと向かい合わせに座った人を、入り口からこっそりと見る。
「なあ、大翔…あの人って」
俺の頭の上からまるでトーテムポールみたいに重なった那智兄さんが、同じ様に食堂の中をこっそりと見る。
「ちょっと前に奎亮兄さんと一緒に食事を作ってたスタッフが辞めちゃったんだ。で、やっぱ1人はキツイからって調理スタッフを募集したんだって」
「ふぅん…そうなんだ…」
見上げると、那智兄さんの視線はただ一点に向かっていた。
奎亮兄さんはあんなにも那智兄さん一筋なのに、それでも不安というか気になってしまうのが恋心なんだろうなと思う。
でも、今の俺は那智兄さんとは別の意味で、其処に居るその人が気になって仕方ない。
「ミモザ館のオーナーの氏原奎亮です」
「先日お電話しました林透真です」
「え~っと、募集についての詳細はご承知頂いてますか?」
「はい」
「林さんは前にもレストランの厨房で働いていたんですね。此処って結構大きなホテルのレストランですよね」
「はい。ちょっと…諸事情で辞めました」
「そうですか……あれ?この高校って…大翔と同じ学校?」
「え?」
渡された履歴書らしき書類を見ていた奎亮兄さんが、不意にこっちを振り返った。
「大翔、もしかして林さんと知り合い?」
「…え?…ヒロト?」
その人もまたこっちを振り返った。
「う、うん…知り合いって言うか…」
食堂に入り2人の居るテーブルへと近づく。
テーブルの前に立つと、ペコリと頭を下げた。
「お久しぶりです。一ノ瀬大翔です」
「え~っと……一ノ瀬って……ああ、あの!」
顔を上げると懐かしい笑顔が其処にあった。
林透真先輩
俺が最後に好きになった人…
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