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宿泊客の夕食を終えてから、自分達も夕食を摂る。 「そういえば氏原さん」 「奎亮で結構ですよ、林さん」 「え~と…じゃあ奎亮さん。奎亮さんも俺の事は呼び捨てにしてください。俺の方が年下なんですから」 「じゃあ透真、敬語も使わなくて良いよ。で、何?」 「お客さんの中に、俺がミモザ館に来た時にイチと一緒に居た人が居るよね?」 「ああ、那智の事?」 「あの人って……もしかして、モデルの水谷那智?」 「うん、俺の幼馴染なんだ」 「えっ?凄いね!」 「うん。でもミモザ館に居る間は他の客と同じに接してもらえるかな。彼奴、疲れた時とか息抜きしたい時に此処に来るからさ」 「へえ~、やっぱり幼馴染だから分かるの?」 「親友だし……俺にとって一番大切な人だから」 一瞬、奎亮さんの口許が甘く綻んだ。 「…え?……それって…」 「あっ!!い、今のはオフレコで!この事知ってるの、此処では他に大翔だけだから!」 慌てて「秘密に!」と付け足す奎亮さんの耳が赤くなっていて、思わず笑った。 「うん。分かった。俺達だけの秘密だね」 シャワーを浴びた後、自分の部屋のベッドで枕を抱き締めて横になる。 今日ミモザ館へ来たのは、奎亮の顔を見たかったからだ。 奎亮の顔を見て俺は大丈夫だと確認したかったからだ。 「俺に隠し事はしないでくれ、那智」 「………俺……今度、単発だけどドラマが決まったんだ」 「え!!凄いじゃん!おめでとう、那智!」 「けど!……けどドラマの中でキスシーンがあるって聞いて…」 「え?」 「俺……嫌だけど今更断れないし芝居だって分かってるけど……気持ちが切り替えられなくて…」 「それで此処に来たのか?」 「………奎亮に会えば迷いが消えるかなと思って…でも…」 「 “でも” ?」 「…さっきの…林さんと話す奎亮を見てたら……分かってるよ!大翔を思っての事だってちゃんと分かってる!…けど…何かもう頭ん中グチャグチャで…」 「……那智」 「…何?」 「今夜11時にこの部屋へ来てくれる?」 ベッドサイドの時計を見ると、後10分程で11時になる処だった。 部屋のパソコンで今日の収支を計算する。 ふと手許の時計を見ると、丁度11時になった処だった。 計ったかのように部屋のドアがノックされた。 「……俺だけど…」 ドアまで歩いて行き静かに開ける。 那智がまだ少し濡れたままの髪で立っていた。 「風邪ひくぞ」 腕を引いて中へ入れるとドアを閉め鍵を掛ける。 「…あのさ……奎す」 那智の唇に唇で触れる。 「教えてあげるよ、俺がどれだけ那智を好きか。だから那智もちゃんと受け止めて。ドラマのリハーサルにもなるだろ?」 ゆっくりと那智をベッドに押し倒した。
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