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店を出てホテルに向かう道すがら、慎太郎の歩くスピードは、さっきと打って変わってゆっくりだった。お腹が満たされて落ち着いたように見えた。
ホテルはバス停の向かいにある大きな観光ホテルにした。ここなら出張中仕事でどれだけくたびれても、最終日に万が一その辺で行き倒れてしまうことになっても、翌朝また空港に向かうのに一番便利だと思ったから。
「なんかせっかく会えたのに、ホテル近いのちょっと残念だな」と慎太郎が呟いた。
私も同じことを感じていた。
「どうせ仕事メインだと思ってここにしたんでしょう」
「ご名答です。でもね、この辺の安いホテルはなかなか空いてないみたいだし、妥当よ」
妥当、なんて言ってしまう自分が一番残念だと思っているうちに、ホテルの前に着いてしまった。
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