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もう一度力を入れて私を丸ごと抱きしめた後で、少し声を落として言った。
「ユウちゃん、ここでずっと抱きしめてるとドラマティック過ぎて、みんな困るよ」
それがすごく慎太郎らしい優しい言い方で感動していると、ふわっと腕は解かれた。注がれる目線が私の心象を傷つけていないかを確かめるようで、急に照れ臭くなってしまう。
「ごめん、急な欧米の愛情表現を実践してみたかったの」
私のその言い訳は無視され、地面に置いていた手荷物をスーツケースに掛けて、慎太郎は歩き出した。
「俺もう腹減り過ぎてたまんないから、ちょっと急いでもらっていい?」
冗談っぽく私を急かすように足を早めた。
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