序章 中東生物災害

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 ――――――――――  彼は夢を見ていた。 『中東生物災害』と呼ばれた五年前の悪夢を。  それは中東での紛争終盤。  響く銃声に怨嗟(えんさ)の絶叫、そして積み上げられていく死屍累々(ししるいるい)。その凄惨な戦場に、二人の少年兵の姿があった。  鈍色(にびいろ)なボロボロのマントを羽織り、ヨレヨレなカーキの戦闘服に身を包んだ少年『黒野影仁』とその弟『黒野宗次(くろのそうじ)』だ。年齢は影仁が十三歳、宗次が十二歳。まだ幼かった影仁と宗次は、海外旅行中に戦争に巻き込まれて両親を亡くし、兵士として訓練され戦場の最前線で戦っていた。  しかし、影仁は淡々としており人生に絶望もしていなかった。ただ生き抜くことができれば、それでいいと。そのためであれば、人を殺すのもやむを得ないとさえ思っていた。  影仁たちの所属する反乱軍は、勝利を目前としていた。重要な拠点を次々に制圧していくと、首都の中心にある正規軍の本拠地へと進軍していく。  そして、異変は起こった。 「――っ! な、なんだっ?」  敵の本拠地で派手な爆発音があったのだ。それを聞いた味方兵が浮足立つ。それでも影仁だけは慌てることなく、どのように目標を達成するかを考えていた。  しかし――
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