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「萱野、聞こえるか」
『成田G長、ご無事だったんですね。先ほど各地で獣鬼の接近情報が寄せられていたところです。そちらへも向かっていると思われますので、すぐに退却してください』
「そうか」
これも郷田の影響だろうか。どちらにせよ、一刻の猶予もないということだ。
『成田さん、内村です。すぐにそちらへ向かいますので、情報を共有したのち退却しましょう』
「ダメだ」
『え?』
清悟はキッパリと言い切った。祭壇の前で愉悦に満ちた笑みを浮かべる郷田、倒れた部下たちの遺体、のっそりと押し寄せる獣鬼たちを順番に見回していく。
「教会はもう獣鬼に囲まれている。お前たちは審脳を捨て、他の拠点を守りに行け」
『待ってください! 成田さんはどうするんですか? 鬼穿のバーニアだけでは街から逃げきれませんよ』
「心配するな。心苦しいが、戦死した林たちの鬼穿を持っていくさ」
『っ! 彼らは死んだのですね……』
「郷田が鬼人だった」
『鬼人!? 奴らがっ!!』
悠哉が声を荒げた。鬼人は彼の尊敬する先輩『姫川彩』の仇だ。無理もない。
「詳細については後でまた話す。今は少しでも多くの人間を救うんだ。萱野、内村、任せたぞ」
その指示を最後に通信を切る。
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