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「ちぃ!」
しかし郷田は柱を蹴り、上空へ飛び上がった。
「まだだ!」
清悟は逆さまに滞空している郷田を見据え、大剣を右後ろへ振りかぶった。そして、右鍔から噴射音を響かせ、薙ぎ――
「――まさかっ!?」
その手を離した。噴射の勢いで回転速度を増した大剣は、ねずみ花火のように火をまき散らしながら郷田へ迫る。
そして――
「ぐあぁぁぁぁぁっ!」
その刀身は見事、郷田を上半身と下半身に両断した。
ぼとりとあっけなく落ちた郷田は、右腕で仰向けに転がり天井を見上げる。
「バカな……この私が人間如きに……」
悔しげに顔を歪めた。声は明瞭であるものの、致命傷であることは日の目を見るより明らかだ。清悟はゆっくりした動作で大剣を拾い上げると、近くの柱へ寄りかかる。すぐそこまでうじゃうじゃと迫っている獣鬼たちを見て呟いた。
「獣鬼、呼んでおいて正解だったな。しかし、口封じなら俺を鬼化させれば済むんじゃないのか?」
「ふんっ……奴らも学習している。最強を作るのに、強い人間をでくの坊にしては意味がないだろ……鬼化するのは大抵、『弱き者』だ」
「弱き者、か……」
清悟は憐れだと思った。争いを嫌い救いを求めた果てに、弱き者と見なされ獣鬼となる。これが、彼らの求めた救いだと言うのか。こんなもの、悲しく憐れな末路でしかない。
「ふふふ……人類がどこまで抗えるのか見もの、だな……」
最後に不敵な笑みを浮かべると、郷田は静かに目を閉じた。
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