第七章 教団決戦

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 清悟は大剣を床に突き立て獣鬼たちへと向き直る。 「……萱野、内村、聞こえるか?」 『はい』  先に返事をしたのは萱野だった。 「準備が整ったら、予定通り『東京』を目指せ」 『は? それはどういう……』 「そこに最後の鬼人がいる。もしかするとそれが人類の最後の希望となるやもしれん」 『成田さん!? そっちはどんな状況ですか? 脱出は!?』  清悟の言葉を遮り悠哉が叫ぶ。清悟は穏やかな表情で目を瞑った。 「すまんな内村」 『な、なにを言って……』 「お前は十五年も前から私の側でよくやってくれた。感謝してもしきれない。最後まで迷惑かけて申し訳なく思うが、後は任せるぞ」  悠哉は清悟の状況を理解したのだろう。言葉が詰まった。清悟も沈黙していると、悠哉が声を震わせながら言った。 『部下は上司を選べません』 「ああ」  その言葉が清悟の心に懐かしく響いた。どこかで聞いたセリフだ。 『でも、その上司に着いていくかを決めたのは自分です。私は、あなたの部下でいられたことを誇りに思います』  清悟は「あぁ」となにかを思い出したかのように、しんみりと頭上を仰ぐ。しかしその胸にはじんわりとぬくもりが広がっていた。 「そうか……萱野」 『はい』 「これからはお前が飛鳥の指揮をとれ。人類存亡をかけた大勝負になるが、お前なら……いや、お前にしかできない。飛鳥を、私の大切な仲間たちをよろしく頼むぞ」 『かしこまりました。成田G長、今までお世話になりました!』  その通信を最後に清悟はインカムを外した。その頬は場違いにも緩んでいる。 「ははっ、萱野があんなに大声を出すなんて珍しいな」  清悟は大剣を肩にかつぎ、大きく深呼吸すると教徒だった者たちへ厳かに告げた。 「あなた方にとっては救いだったのかもしれない。だがそれは、今を懸命に生きている人たちまでも危険にさらす。それを許すわけにはいかない。だから、俺はっ、俺の正義を貫く――はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
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