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第八章 最後の鬼人
その鬼は退廃した大都市の真っ暗な地下通路で、あぐらを掻き静かに目を瞑っていた。
彼は見ていたのだ。長い間、どんなに苦しくとも悲しくとも決して挫けることなく、戦い続けた男の最期を。遥か遠くのこの地から。
その男は今まさに、大教会へ押し寄せる獣鬼の大群にたった一人で立ち向かっている。鬼穿の燃料が尽きようとも、体のいたるところを噛み千切られようとも、決して倒れず、瞳の闘志を絶やさず、龍断包丁を振るい続けた。
そして遂に、体の限界を迎え膝を床に着くと、鬼穿の自爆装置を起動した。
「――見事だった」
淡々と呟くと、その鬼はゆっくりと目を開け立ち上がった。
その鋭い視線を左へ向ける。真っ暗な中、なにも見えていないはずだが、彼は遥か遠くを眺めているかのようだった。
「今度こそ約束を果たすぞ、光汰……」
彼は悲しみを孕んだ声で呟くと、地上へ向かって歩き出した――
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